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特集:VOL.12「菅平のグラウンドをひた走る」

2009/08/21

特集:日本一を目指す「明治大学ラグビー部、前へ」VOL.12
「菅平のグラウンドをひた走る」

夏合宿に入って、2週間近くが経とうとしている。菅平は少し雲が多いが、今日も朝から強い日差しが差し込んでいる。選手たちは、朝からグラウンドへ。毎日、お昼を挟んで午前、午後と多彩な練習が重ねられている。集中して続けられる練習で、チームのコミュニケーションと選手たちのスキルは確実にアップしている。今回はそんな菅平での練習風景からお届けします。

「合宿の目的を明確にしてスタートした夏」

ラグビー部の夏といえば菅平で合宿、そんなイメージがある。何となく夏だから合宿をするというのではなく、菅平で合宿をする意味を明確にして臨んだという吉田監督に話しを聞いてみた。
「合宿そのもののテーマは、秋からのシーズンに向けて『自分に勝つ』『プライドを持って臨む』『妥協せずにやり遂げる』などで、いずれも達成するためには強い意志が必要です。それともうひとつが、徹底的に頭を使うことです。合宿というとフラフラになるまで走らされるようなイメージがありますが、チームとして共有すべきプレーを、練習の中で頭を使って考えながら会得していく場でもあります。まず目的を明確にして、合宿に臨むことが大事だと思います」。
夏合宿を前に吉田監督は、選手たち一人一人に「何のために夏合宿をやるのか」という問いを投げかけている。その答えは様々であったようだが、3つの共通した認識を持って合宿に臨んでいるのだという。1つめは「菅平という環境」。気温は日中でも24~27℃という高原特有の涼しさの中で、効率よく怪我のリスクも少なく練習をすることができること。2つめに夏休みの時期を利用して「ラグビー漬け」になれることだ。朝から晩までラグビーにどっぷりと浸かることで、選手たちのスキルを大きくアップしてチームとしての意思統一もはかる。3つめはシーズンを前にした「タイミング」であるという。戦術戦略をしっかりと身につけるのにいい時期なのだ。ゲームプラン、フォーメーション、共通認識をしっかりとやる。もちろん走るが、それは考えながら走る時間でもある。選手たちはそんな思いで、この合宿に臨んでいる。

「それでもフィットネスはしっかりと!」

ある日の練習終了後、グラウンドでは大川コーチによるフィットネスが行われていた。腕立てや腹筋やスクワットなど、腕、脚とそれぞれの部位の筋肉にしっかりと刺激を入れた後、一斉に全速で走る。筋肉を使い切って、乳酸を溜めた状態で思い切り走るトレーニングが繰り返される。
「はい、しっかり乳酸を溜め込んで思いっきり走ろう。試合の後半にもしっかりと走れるイメージを作ろう」と大川コーチの声が響く。
何のためのトレーニングなのか、何のための練習なのか、いつもその目的が明快になっているのは明治大学ラグビー部の特徴的なところかもしれない。身体能力の高い選手たちも「うわ~、パンパンだ」という声を漏らしながら走っている。タオルを使った二人一組のエクササイズも決して力を抜くことはない。もう引けないというところまで力を出しきってから、ランニング。これも全力で走る。疲れたところで頑張らなければ、自分の体が次のステージに上がっていかないのだと、言い聞かせるようにガンガン走っている。
菅平の傾きかけた光の中、グラウンドに長い影を落としながら走り込んで、一日の練習を終えた。

「練習は朝9時から始まる」

選手たちのスケジュールを見てみると、朝7時から8時の間に朝食をとり、9時から午前中の練習がスタートする。昼食とお昼休みを挟んで、午後は2時から6時の間が再び練習に当てられる。グラウンドの練習にもいくつかのメニューがあり、そこにジムやフィットネス、個人練習、他校との合同練習、練習試合が組み込まれている。練習試合の次の日には、オフもある。結構、多彩な練習メニューでビッシリと埋まっている。もちろん、ミーティングもある。オフの日も、ほかのチームに試合が組まれていれば、当然応援に出かける。試合がなければ、菅平に来ている友人と会ったりするそうだが、いずれにしてもラグビーに浸ることのできる時間なのだ。
ひとたびグラウンドに出れば、ひたすらプレーに集中する。ただ練習をするのではなく、試合のための練習が繰り返される。
「フィールドではみんなが主役なんだから、どんどん声を出してコミュニケーションをとっていこう。試合ではコミュニケーションが大事」と土橋コーチの声が飛ぶ。
「静から動に切り替えを素早く。動に移ったら速く動かす」と吉田監督の声も聞こえる。
西原ヘッドコーチは自らフォワードの3のポジションに入って、スクラムのコーチングをしている。どこに目をやっても、試合を想定した練習に終始する光景を見ることができる。

「課題を明確にして順調にスキルアップ」

合宿がスタートして毎日積み上げて来た練習は、その効果を見せているという。
「はじめの2日ほど天気が悪かったですが、あとは多くが晴天に恵まれて順調に来ていると思います。他校との合同練習のいい刺激になっています。課題だった部分も大分クリアできてきています」と西原ヘッドコーチ。
主将の金澤くんは「いい感じです。合同練習ではフォワードも手応えがあったと思います。練習試合もやってきたことを出しきっていければ、結果はついてくると思います」と話している。
疲れも溜まってきているが、ここからの練習試合などで、さらに実践的なスキルアップが望めそうだ。
吉田監督は先日の慶應義塾大学との練習試合に触れ「慶應との試合は、負けたAもいい動きができていました。得点だけをみると驚いてしまうかも知れませんが、いまのうちの仕上がりからすれば想定していた範疇です。それよりも練習でやってきた動きがいかに出せるか。これができてきたことは大きいです。春の試合でも慶應はうちよりも仕上がっていたと感じました。心配はありません」と笑顔で語った。

(取材・文/遠藤一樹 撮影/福田喜一)