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特集2010:総仕上げの菅平合宿

2010/08/26

日本一を目指す「明治大学ラグビー部、前へ」VOL.45
「総仕上げの菅平合宿」


 長野県上田市菅平高原。全国各地の大学ラグビー部が秋の公式戦に向けてキャンプを行うなか、明治も8月24日より合宿に入った。FW陣のニュージーランド遠征を皮切りに、全チームでの北海道合宿を経て、菅平に乗り込んだ選手たち。対抗戦の開幕を翌月に控えて、いよいよ総仕上げの段階となった。6日間と短くはあるが、濃密な時を過ごし、この地でチームはよりたくましく、熟成されていく。


「やり残すことがないように」

 北海道・美幌町での合宿を打ち上げ、2日間のオフをはさんだ明治。八幡山からの移動日となったこの日は、ミーティングと練習にあてられていた。翌25日にはA、Bが法政、Cが関西大学との対外試合が早々に組まれることになっている。さらに29日には、昨年の準優勝校である東海大との一戦も控える。春のオープン戦から夏合宿と、間断なく積み上げてきたものを、個人としてもチームとしても確認していく場となるはずだ。9月12日に開幕を迎える関東大学対抗戦に向けて、チームはいよいよ最終段階へと突入した。
 午後の練習前に行われたミーティング。宿舎に入り、リラックスした表情を見せていた選手たちも、一様に真剣な表情を見せる。吉田監督から、この合宿の目的が伝えられた。「今日から、開幕に向けて仕上げの合宿に入る。ラグビーへの取り組みはもちろん、グラウンドを離れても姿勢を正して過ごすようにして、山を下りよう。北海道合宿でも意識をして取り組んできた3つのS(シンプル、スピード、ストロング)を継続して、突き詰めていく」さらに続けて、ポイントを挙げる。「メンタルの面ではチャレンジし続けることを忘れないこと。挑戦をしてこそ進化し、成果を出せるんだ。セレクションマッチで君たちが見せてくれた、個人としてもチームとしてもチャレンジしていく姿勢。あの姿勢を貫いてほしい」。チームが始動して以来、掲げ続けてきたチームとしてのキーワードを改めて確認した吉田監督は、こう締めくくった。「この合宿では、対外試合を組んでいる。これは我々が春からやってきたこと、積み重ねてきたことを発揮する場だ。9月12日からは公式戦が始まる。その日に向けてやり残すことのないように、仕上げていこう」。
 日に焼け精悍さを増した選手たちの顔が引き締まった。杉本主将からも伝えられた。「一人ひとりが意識していこうぜ。練習ももちろんやけど、生活態度もそう。例えば俺たちは挨拶することを大切にしてきた。一人ひとりが怠ることなくやっていくことに意味があるし、チームのためになる。それが明治を応援してくれることにも繋がっていくはずやから。一日一日、大切にしていこうぜ」。



「一日の質を高めていこう」

 立秋を過ぎたとはいえ、この日は真夏のような気候。強い日差しが降り注ぎ、わずかの間でも屋外ではじっとりと汗が浮き出てくる。時折、微かに吹く爽やかな風と、四方に広がる山波だけが、標高1300メートルの高原であることを思い出させてくれる。ミーティングを終えた選手たちは、宿舎からほど近いグラウンドに移っていった。練習のスタートを待って、グラウンドに集まった選手たち。細谷ヘッドコーチが簡潔に伝える。「明日は試合だからシャープにトレーニングを行いたい。試合で受けに回らないために、体も少し当てていくつもりだ。これからの時期は一日の質を高めていく必要がある。一日を充実させてクオリティを上げていこう」。
 ウォーミングアップから始まった練習は、徐々に運動量の多いメニューへと続く。なかには、具体的なシチュエーションを想定した、烈しいトレーニングも行われていた。熱を帯び、選手たちの動きが鋭くなっていくにつれ、細谷ヘッドコーチや西原コーチ、黒須コーチの指示やアドバイスも激しくなっていく。選手たちもみな、それに呼応する。けれど、ここは酸素の薄い高地。サーキット系のタフなトレーニングが続き、肩を大きくいからせて呼吸も苦しそうだ。そんななかでも「苦しいところでこそ声を出そうぜ明治!」。「下向くな! ポジティブにいこうぜ」と声をかけ合うたくましい姿があった。
 濃密な時間となった練習は、後半からユニットに分かれてのトレーニングとなった。BKはパスを、FWはラインアウトとスクラムを重点的に鍛えていく。AチームのFWのラインアウトでは、杉本主将を中心にしながら、サインを念入りに確認していく。トライに直結する、明治がこだわるセットプレーだ。限りなく精度を高めていくための、強い意志が感じられる場面だった。もちろん、スクラムのトレーニングも入念。強いFWの復活を掲げた明治にとり、妥協の余地は一切ない。西原コーチの「クラウチ、タッチ、ポーズ、エンゲージ!」のコールのたびに強くバインドしたスクラムから迫力のある音があがり、選手同士でも確認作業が続けられていた。



「チームとして精度を上げていく」

 気がつけば太陽は大きく西に傾き、風も涼しくなっていた。汗を流す選手たちには心地良さそうだ。ユニットの練習を終えると、最後はA、B、Cの各スコッドに分かれてのトレーニングで締めくくられた。チームのムードは明るく、一様に充実した表情を見せている。選手たちを集めて細谷ヘッドコーチが話した。「ごくろうさん。今日は質の高いトレーニングになった。良かったと思う。明日の試合はA、B、C、全部で勝とうぜ。ここからは自信をつけていくことが大切になっていくから」。
 こうして、総仕上げの菅平合宿がスタートした。練習時間終了後も、グラウンドではギリギリまで自主練習が続いている。FWはラインアウトの再確認に余念がなく、夕食の時間だと促されて渋々引き上げるほど。一日一日を、少しの時間をも無駄にはしたくない。そんな意思がしっかりとチームに共有されているのだろう。副将の衛藤が話してくれた。「9月から対抗戦が始まるので、今までやってきたことをしっかり出せるように準備したいと思っています。北海道では春から取り組んできたことが、チームとしてできるようになってきた。だから、菅平でやることも、これまでと変わらないです。3つのSとチャレンジ。今まで継続してきたことを、チームとしても個人としても、さらに精度を上げていきたいと思っています。チームとして安定して力を出していけるように。明日からの対外試合では、それを確認していきたい。今日は久しぶりの高地で、ちょっとキツかったですけどね」。
 夕日を浴びながら、最後までボールを追っていた選手たちも、宿舎に戻るためのバスに乗り込んでいく。心得となる5つの言葉からスタートし、体幹の強化、3つのS、そしてチャレンジの姿勢と、心身ともに新たな積み重ねを行ってきた吉田監督が率いる明治は、いよいよ2度目の公式戦を迎える。その最後の仕上げを終えたとき、選手たちはどのようなプレーを見せてくれるのだろうか。開幕戦となる日体大戦まで、あと半月を数えるばかりとなった。


(撮影/福田喜一 取材・文/田口悟史)