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特集2010:北海道の夏合宿

2010/08/20

日本一を目指す「明治大学ラグビー部、前へ」VOL.44
「北海道の夏合宿」

 北海道、女満別空港から、車で20分くらい走ると美幌町にさしかかる。今年の明治の夏合宿が行われている場所だ。さすがに北海道の気候は過ごしやすく、東京の蒸し暑さを忘れさせてくれる心地よさがある。FWの選手たちのニュージーランド遠征の帰りを待って、全員でスタートした今年の合宿は、気合いに満ちた雰囲気の中、早々に部内マッチが行われた。


「春から積み上げて来たもの」

 1年生対2年生、3年生対4年生で行われた部内マッチでは、7月の試験期間を含めたセルフトレーニングの時期をどのように過ごして来たかが如実に現れるのだという。その間、自分で練習を積んだ選手たちの動きはやはりいいのだ。そして春から積み上げて来たものが、しっかりと体に染み込んでいる選手たちの動きはさらにその精度を増していくはずだ。
 9時40分過ぎから始まったゲームは、30分ハーフで行われた。最初の1年生対2年生の試合は、前半2年生チームが押している。2年生が上回っているのは1対1の接点。ディフェンスが押さえ込み、オフェンスに転じても勢いを失わない。1本、また1本とトライを奪い結果4つのトライで、0-20と2年生がリードして前半を終えた。コンバージョンゴールはなしというルールだ。
 ハーフタイム、2年生にコーチが「1対1のタックルにこだわっていこう。後半もシャットアウトを目指そう」と話していた。一方、1年生には、テクニカルな指導をこと細かに行っていた。
 後半が始まると1年生の動きに活気が出て来た。前半で入れ替わった選手らが、フィールドの選手たちに大きな声で指示を送る。7分に1本トライを返したのを皮切りに、その後も立て続けにリターンからBKにボールをつなぎ中央突破で2本目、9分にもボールを奪ってトライを決め15-20と点差を詰めた。点差を詰められて奮起した2年生も12分、17分とトライを重ね15-30と差を広げ、29分、34分にもBKがパスと走り込みでトライを奪い結果は15-40でゲームを終えた。


 続けて3年生対4年生のゲームが行われた。こちらも4年生が2本のトライを重ねて0-10とリードするが、20分には3年生がモールからドライブしてトライを返して5-10と迫り、前半終了間際には、今度は4年生がドライビングモールでトライを返して5-15とした。短いハーフタイムを挟んで、後半が始まり、3年生がスクラムを押す場面が目立って来た。スクラムを回してペナルティを奪う場面もあった。低く押せているのだろう。3年生のFWが押して前へ出ていく。後半15分過ぎには、3年生がトライを返し10-15。4年生もBKの鋭いタックルが決まるシーンが印象に残る。しかし、残り8分で、3年生チームのキックから走り込んだBKがトライを決めて15-15としてゲームを終えた。部内マッチで各選手が発揮した力と動きを、櫓の上でじっくりと観ていた吉田監督は、それぞれの選手たちのポテンシャルを感じ取っていたのだろう。この日の午前中の予定を終えると午後の指示を出して、選手たちと一度宿舎に引き上げていった。午後は東海大学、同志社大学との合同練習が行われるのだ。



「北海道合宿でやるべきこと」

 吉田監督は、北海道合宿が始まるとすぐに選手たちを集めてその目的を明確にしたという。
「この合宿の目的に関しては、1対1の再強化、3S(シンプル、スピード、ストロング)を徹底的に突き詰めていこうと選手たちに話しました。今シーズンの明治は、真っ向勝負の押し相撲で勝てるようなチーム力を目指しています。そのためには、常に個々がチャレンジしていく心構えが必要です。合宿では基礎練習を積み上げながら、それぞれのプレーを磨き上げ、精度を高めていきます。もちろん力が拮抗したチームとの試合を想定して、戦術戦略、ゲームプラン、選手たちのクリエイティブ力も必要になってきます。そして勝負どころの後半残り20分でどれだけチャレンジができるか。それは日々の練習の中でしか打開策を見出だすことができません。苦しい状況を個々がチャレンジスピリッツを持ち乗り越えていくことができれば進化をすることができる。この合宿ではチャレンジという言葉を、ひとつのキーワードとしています。チャレンジから進化、そして成果を出していこうという考えで毎日の練習を行っていきます」と吉田監督。
 監督によると、この日の午前中に行われた部内マッチには、選手たちの状態を見るだけではなく、シーズンを前にしてもう1つ目的があるのだという。
「学年別の部内マッチでは、選手たちの状態をきちんと掌握していくことは主目的のひとつです。1年と2年、3年と4年というゲームの中で選手たちの動き、状態をしっかり見極めていくことになります。この状態から選手をランク付けして15日の同志社戦に臨むことになります。そして、この試合がひとつセレクションマッチとなります。実は部内マッチには、もうひとつ目的があって、学年ごとに、またチームとしての一体感を再確認して欲しいと思っています。チームの一体感は、これからのシーズンを戦い抜くためにも大事ですから」。
 春を好成績で戦って来たチームは、モチベーションも高く、何よりも主将・杉本、副将・衛藤がチームをまとめてきた。合宿にも選手それぞれが自覚を持ったいい状態で臨んでいるのだという。


「強さを増したFW、脚力のアップしたBK」

 この夏は、北海道での全体合宿を前に、FWの選手たちがニュージーランドに渡り、ワイトカで本場の選手たちと練習を積んで来たのだという。この遠征に同行し、オーガナイズしたWAIKATO RUGBY UNION INCORPORATEDの宮浦成敏コーチにも話をうかがった。
「選手たちはとてもいい経験をしたと思います。本場のプロの選手たちと一緒にやれたことは、刺激になったと同時に大きな自信につながったはずです。プロの選手たちのいいところ、自分たちがまったく通用しないところを肌で感じることができた。モチベーションを上げていくことにも多いに役立つでしょう。そしてシーズンで当たるであろう体の大きな外国人選手たちのいるチームにもいままでと違った感覚でぶつかっていける。ワイカトで闘志剥き出しの選手たちに揉まれた経験が生きてくるでしょう」。

 網走のグラウンドに場所を移しての合同練習では、それぞれの大学がアップしながらその時間を待っていた。FWは西原コーチ、黒須コーチとアップ続ける。BKは徹底的にパスの基礎が続けられていた。細谷ヘッドが見守る中、宮浦コーチの声が飛ぶ。「パスをもらったら手を下ろさない。そのまま一歩先へ」。選手たちのパス回しが一段、鋭さを増して見えた。
 アップを終えたFWの選手たちが、合同練習に移る。A、B、Cに分かれてスクラムの練習が行われた。攻守3本ずつで続けられていく。明治が押し切る場面もあれば、東海大にまくり上げられる場面もあった。城が、榎が、8人が一体となってスクラムを押しまくる。東海大、同志社の胸を借りて実践さながらの練習が続いた。BKもオフェンス、ディフェンスともにパス回しからタックルまで東海大と組んで練習が続けられた。合宿はこれからが本番というものの確実に脚力を増しつつあるように見えた。タックルも低く、1対1を意識した攻防が続いていた。さらにFWはラインアウトの練習に移った。スローインされた直後のポジション取り、モールの組み方、押し方、ディフェンスの入りの角度など、ひとつひとつを検証しながら、夕暮れまで続けられた。


「合同練習を終えて」

 練習を終えて吉田監督がFWの選手たちに話す。
「夏合宿では密にチームの意思統一をはかっていこう。そのためにも誰か一人でも問題点に気づいたら8人が一つになって話し合い、改善、修正していくことをもっと意識的に取り組んでほしい」。
 それを受けて主将の杉本は「修正能力が大事だ。誰かが話している時には、目を見て聞こう。もっとコミュニケーションを取っていこう」と皆に話した。
 ニュージーランドへのFW遠征、合宿に入っての状況を吉田監督に聞いた。
「FWはニュージーランドに行ったことで、素晴らしい経験ができました。世界ランキング1位のラグビーを肌で感じることができたし、ワイカトユニオンのプロコーチたちから貴重なセッションを受けることもできました。その経験を活かして、夏の合宿でさらに力をつけていくことができるでしょう。BKも遠征に連れて行きたかったのですが、限られた予算の中でのチーム強化。今回はかないませんでしたが、選手たちは春の結果をモチベーションに練習に精力的に励んでいます」。
 夏合宿でさらにブラッシュアップを続けていくことになるなか、開幕に向けて最も意識しているのは、どんなところなのだろうか。
「選手ひとり一人が自分たちの決めたことをしっかりと最後までやりきる。そのためには、こだわりを持って基礎プレーを徹底してやっていくことが大事なんです。どれだけ地道に基礎練習の反復に取り組んでいけるかです。基礎が強固なチームは簡単には崩れないものです。今年はFW強化を最重要項目と位置付けて取り組んで来ました。開幕戦で“今年の明治はこれか”とファンの皆さんに強烈にインパクトを与えることができると確信しています」と吉田監督。
 美幌・網走の合宿を訪ねた数日後に、同志社大学との練習試合が行われた。A、B、Cチームがそれぞれの結果を出している。北海道合宿も後半に差しかかっている。今月終盤は、合宿を菅平に移して最終の仕上げが行われる。開幕に向けて着実に前へと進んでいるようだ。

(撮影/福田喜一 取材・文/遠藤一樹)