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特集2010:「雨の法政戦を制す」
2010/05/25








小瀬スポーツ公園陸上競技場には、朝から冷たい雨が降り注いでいた。午前中に組まれた山梨選抜チーム対山梨学院大学の試合が終了し、午後12時30分、室内のサブトラックにはリラックスした表情の選手たちが姿を現し始める。春の晴天から一転、気温もぐっと冷え込んだこの日、選手たちは念入りなストレッチで徐々に身体を温めていく。
「チャレンジだ。上位チームに勝って、俺たちのラグビーを見せつけよう。強さ、早さ、勝つことを意識してアップしていこう」と、細谷ヘッドコーチが選手たちに声をかける。ウォーミングアップを通じて、身体がほぐれていく。選手たちの声も次第に力強さを増し、ボルテージは徐々に上がっていった。ボールを使ったアップのため、室内のサブトラックからスパイクに履き替えグラウンドに出た選手たち。彼らの闘志に対抗するかのようにさらに強まる雨脚は、選手たちの身体を容赦なく打ち付けていた。
アップを終えたロッカールーム。紫紺のジャージに着替えた選手たちが集まり、細谷ヘッドコーチの声が飛ぶ。「今から、明治というチームになろう。雨の日、FWはいつも以上に運動量が問われる試合だ。運動量を多く、立ったプレーを意識しよう。我慢くらべになるぞ。1対1で絶対勝つ」。続いて吉田監督が語りかける。「雨の中のゲームは確実にパワー勝負になる。FW勝負だよ。最初から強く烈しくプレッシャーをかけよう。FWから切り裂いて行くよ。BKはボールのハンドリングを確実に。立ってプレーすることを心がけボールを大切に継続していこう」。主将の杉本が円陣を組んだメンバーに伝えた。「FWがどんどん前に出て、BKで確実に仕留める。思いっきり暴れようぜ」。選手たちの気迫に満ちた声がロッカールームに響き渡る。これから、厳しい一戦が始まろうとしていた。




前半は法政大学のキックでスタート。開始早々3分、明治ボールでのファーストスクラム。がっちり組んだ強い当たりで法政にプレッシャーをかける。立ち上がりから攻勢に出る明治。スコアが動いたのは7分過ぎ。マイボールのスクラムから素早くパスをつなぎ、この試合唯一の1年生、15高平が右サイドから大きくゲイン。最後は14木村が先制のトライを挙げる。10田村がゴールも決めて7-0とリードする。
その後もフォワードが圧倒し、主導権を握った明治。雨でスリッピーとなったボールのせいか、時折ノックオンやラインアウトのミスが出るものの、15高平の中央からのラインブレイクなど、果敢に攻め入る積極的なプレーが光っていた。攻め手を緩めない明治。20分過ぎには法政のペナルティからゴールライン付近でのマイボールのラインアウトを選択し、そのままモールで強いプレッシャーをかけていく。その後も5回6回とゴールライン手前でのスクラムの機会を得て、FWが前へ前へと出る明治らしいプレーが続いた。得点には結びつかなかったが、力強さを感じる惜しい場面だった。
再びスコアが動いたのは35分。法政陣内22メートルライン付近で得たマイボールスクラムから、そのまま前へ押し切ってトライ。ゴールも決めて14-0と差を広げる。しかしその直後、明治のパスミスから左サイドの突破を許し、トライを挙げられてしまう。ゴールはならなかったものの14-5となる。
前半終了間際のロスタイム。この試合、たびたび見られた法政のオフサイドのペナルティから、明治はペナルティキックを選択。位置はハーフウェイライン付近と長い距離を残していたが、10田村が見事に成功させる。鮮やかなキックで17-5と加点したところで、前半を終えた。




前半を終えた選手たちは、ロッカールームで声をかけあう。FWでは主将の8杉本が中心となって「もっと動こう、足が止まってる。動き出しを早くしよう。トライのチャンスは必ず来るから」と前半の修正点と後半戦への課題を話し合う。そして悪コンディションの中で戦う選手たちを集め、細谷ヘッドコーチがアドバイスを送る。「前半、良い形で試合が進んでいる。トライを焦らず、シンプルに戦おう。雨の中で厳しいゲームだけれど、自分たちのペースを作っていこう」。続いて、吉田監督が語った。「ブレイクダウンの接点では法政を圧倒できている。もっとボールコントロールを確実にしていこう。立ってプレーすることを強く意識して、密にコミュニケーションをとりながらボールを継続し、連続攻撃をしていけば、トライをもっと取ることができるぞ」。選手たちが円陣を組むと、副将の衛藤が声をかけた「練習通りにやればいけるぞ。プレーは熱く。頭はクールにいこうぜ」。そして最後に主将の杉本が加えた。「ゲームプランはしっかりできている。落ち着いてやれば、トライはとれるからな。後半、走りまわろうぜ」。
明治のキックオフでスタートした後半。開始早々の3分、早くもスコアが動く。法政陣内、22メートルライン付近のラインアウトから明治がドライビングモール。そのままインゴールに流れ込み、6竹内がトライを奪った。10田村がゴールも決めて、24-5と法政を突き放す。
その後はしばらく膠着状態が続く中、14分に明治は初めてのメンバーチェンジ。後半早々でトライを決めた6竹内に替わって19千布が入る。18分には3城に替わり17小野、20分には4古屋に替わって18梁を投入した。
後半に巻き返しをはかる法政。特徴的な素早い展開が徐々に見られるものの、明治は烈しいディフェンスで渡り合う。13衛藤や1小暮をはじめとした明治フィフティーンの低いタックルが見られた。しかし24分、法政の粘り強い攻撃にトライを奪われ、24-10と得点を許す。
その後も明治は崩れることなく、ゲームをコントロール。得点を積み上げることはできなかったものの、明治らしい力強いプレーを最後まで見せてくれた。後半は法政の攻めに対し、守備にまわる場面も多い明治だったが、1対1での強さと意識の高さを感じさせる好ゲームとなった。




終始激しい雨に打たれる厳しい試合となったが、熱いシャワーで汗を流し、冷えきった身体を温めた選手たちは、上位チームとの一戦に勝利し、試合後には晴れやかな表情を見せた。この日の試合を振り返り、吉田監督がこう語ってくれた。「雨の日の試合は、どうしてもボールコントロールの精度が落ち、長いパスが通りにくくなります。その点は修正していきたいですね。しかし試合前に掲げた、立ってプレーを継続するというテーマは、選手たちがしっかりと意識していたと思います。後半の法政に押された場面では、最後の最後でしっかり守ることができている。大崩れすることがありませんでした。明治がこだわっている、1対1で負けない強さ。そしてディフェンスでは『紫紺の壁』を崩さない。これらの意識も選手たちに浸透してきました」。吉田監督の言葉に、昨年からの課題をひとつひとつ自分たちのものにしている新チームに対する、確かな手応えを感じる。
最後に副将の衛藤選手にも話を聞いた。「雨の影響で細かなミスは目立ってしまいましたが、粘り強いディフェンスができるようになったのを感じます。練習でやっていることが、試合で活かせるようになってきているので、これからも一つ一つチャレンジしていこうと思っています。Aチームの選手だけでなく、B、C、Dチームの選手も意識が高まりつつあり、チーム全体の底上げもされています。やはり、勝つことが大事。これからも勝ちにこだわってやっていきたい」。
新しいシーズンが明けて、およそ2ヵ月。ここまで勝ち星を積み重ねてきた明治の背景には、吉田監督の就任以来、昨年からの取り組みの結果が現れているのだろう。来週には、静岡県で早稲田との一戦が控えている。今日までの経験と成長が問われる、見逃せない試合になりそうだ。



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