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特集2010:「大東文化大に勝利」

2010/05/18

日本一を目指す「明治大学ラグビー部、前へ」VOL.37
「大東文化大に勝利」



 

「さいたまラグビーフェスティバル」は、埼玉県ラグビーフットボール協会が主催する、5月の恒例イベント。その招待試合として明治大学と大東文化大学のゲームが組まれた。強い日差しが照りつける中、紫紺のジャージを身に着けた選手たち。関東大学リーグ1部に属する実力校を相手に、そのプライドを見せつける戦いとなった。

第18回 さいたまラグビーフェスティバル
明治大学 vs. 大東文化大学
○ 53-12 ●


2010.05.16 埼玉県営熊谷ラグビー場





「1対1に勝ち切る」

 時折吹く風は心地よく、初夏の強い日差しを浴びた肌を和らげてくれる。鮮やかな芝に覆われたサブグラウンドで体を温め始めた選手たち。その顔には早くも汗がにじんでいた。この日行われる大東大との試合は、新シーズンのスタート以来初となる、現役学生選手同士の紫紺を着用する戦い。勝つことはもちろん、明治らしさという内容も問われる一戦になる。「明治、強く行こうぜ強く!」。その気迫を表すかのように、ウォーミングアップを行う選手たちからは大きな声が飛んでいた。
 アップを終えた選手たち。ロッカールームで準備を整えながら、細谷ヘッドコーチの言葉に耳を傾けていた。「今日は1対1、1対1だぞ。ディフェンスはすぐに入ろう。リアクションの速さが大切。自陣のゴール前に入られれば入られるほど、コミュニケーションも大切になってくるぞ。それから、ファーストスクラムを仕掛けていこう」。そして試合直前、吉田監督が選手たちを集めた。「紫紺。魂だよ。ひとつひとつのプレーに全力で、強く、烈しく! 約束してくれ。それだけだ」。主将の8杉本は円陣を組んで、スコッドメンバーに伝える。「今日のテーマは1対1。苦しい時はコミュニケーションをとろう。俺たちには100人近く部員がいる。出られないやつらのためにも、恥ずかしい試合はできないぞ」。副主将の13衛藤も続けた。「全力でやろうぜ。気合い入れて」。気迫の込もった声が、廊下まで響いていた。


「主導権を握る」

 前半は大東のキックオフでスタート。明治は立ち上がりから烈しいプレーをみせる。開始早々2分には、明治ボールのファーストスクラム。しっかりと強固に組み、大東にプレッシャーをかけていた。自陣からの10田村のタッチキックをきっかけに攻勢に出た明治。ラインアウトからドライビングモールでゲインし、大東のゴールライン手前でスクラムの機会を得る。そのチャンスを逃さず、前半7分、明治は8杉本がスクラムトライを挙げる。ゴールはならず、5-0とする。
 FWの圧力でゲームの主導権を握った明治。時折、ラインアウトのミスが出るものの、烈しいディフェンスとブレイクダウンのプレーで終始攻勢に出る。加点も時間の問題かと思われたが、実際にスコアが動いたのは16分のこと。大東の粘り強い守備をこじ開けるかのように、8杉本が再びスクラムトライを決めた。10-0となるも、攻め手を緩めない明治。大東の攻撃には烈しいディフェンスで対応し、ボールを奪えば素早くFWがポイントを作る。12溝口や7三村の鋭いタックルからターンオーバーする場面も見られた。続く21分にはさらに加点。大東陣内22メートルライン付近でのスクラムから、8杉本が中央を力強くランニングし、10田村へと繋がりトライを決めた。15-0となる。
 午後2時より開始し、暑い中で行われた試合。27分にはウォーターブレイクがとられた。明けて早々の29分、大東がハイパントで打開を試みる。中央でキャッチに成功しサイドへ展開。突破を許し、トライを挙げられてしまう。ゴールも決まり15-7。
 失点を喫した明治に動揺は見られない。大東陣内の攻め込み、スクラムサイドを8杉本が強引に突破。ラックから9秦、10田村と渡り、フェイントの入った好パスを14小澤へ繋ぎそのままトライ。ゴールも決めて22-7とする。明治はその後も攻め手を緩めない。相手陣内のペナルティでは、常にスクラムを選択し、FWの圧力を全面に押し出していく。明治らしい戦いぶりを見ることのできた前半。スコアはこのままでハーフタイムとなった。



 
「もっと強く、烈しく」

ハーフタイムのロッカールーム。FWとBKに分かれて選手達は修正のポイントを話し合う。「サポートプレー、もっと速くしよう。動き出しが遅いよ」。8杉本は熱くなった体を氷で冷やしながら、FWに伝えていた。細谷ヘッドコーチは選手を集めて指示を出す。「1対1は勝てている。ラインアウトはもっと競っていこう。後半、リザーブの選手と入れ替えていく。その時、プレースピードを上げていこう。入替は、私たちからのスピードアップのメッセージだ」。最後に、吉田監督が選手たちに伝えた。「地上戦は各々、制圧することができているが、空中戦は修正だ。接点でのボールの扱いを大事にして、プレーの継続にこだわること。後半、更に、烈しく、強く、前にでること、チャレンジしていくぞ」。選手達は円陣を組む。「後半、40分間走りまわろうぜ」。8杉本はメンバーに声をかける。13衛藤も「コミュニケーションをとっていこう」と伝えた。
 後半は明治のキックオフで開始。スタート時から2郷に替わって16渡部、11富川に替わって21木村が入った。明治は早々にスコアを動かす。大東陣内10メートルライン付近から、10田村が6竹内に好配球。大東のディフェンスラインを抜け出し、およそ30メートルを独走。そのままインゴールを駆け抜けた。10田村はゴールも決めて29-7とする。続く4分には、ハーフウェアライン近くでモールを組み、左サイドへ展開。パスを受けた13衛藤が鋭いランニングでゴールラインに迫り、最後はタッチ際を走る14小澤へ繋ぎトライ。34-7となる。
 12分には4梁に替わって18古屋が入った。13分、大東のラインアウトをターンオーバーし、明治は逆サイドの右へ展開。10田村から8杉本、18古屋と繋ぎラインブレイクし、9秦を経由して最後は10田村がトライを奪う。ゴールも決めて41-7と加点。暑さと疲れで足が止まりだした大東を前に、明治のアタックが勢いを増していく。20分、明治は3城、7三村、9秦の3選手と17小野、19榮長、20筆谷を入れ替えた。25分には右サイドのモールから、10田村、21木村へと繋がり、大東のラインを中央突破。そのままトライを挙げた。10田村もゴールを決めて48-7。
 しかし27分、明治がキックパスから攻撃にかかったところを大東がターンオーバー。BKにライン際を駆け抜けられて、トライを返される。ゴールはならなかったものの48-12とされる。30分には13衛藤と22大澤を入替。この試合2回目のウォーターブレイクがとられた。35分、反撃に出た大東は明治のゴールラインへ迫りBKで突破を狙うも15小泉が鋭いタックルで対応。得点を許さない。ロスタイムに入るも、攻撃の手を緩めない明治。大東陣内のマイボールラインアウトをきっかけに、10田村が8杉本へと繋ぎトライを奪取。53-12としたところでノーサイドの笛。最後まで戦い抜いた両チーム。時計は44分をまわっていた。




「まだまだこれから」

 40点差をつけての勝利を挙げた明治。試合後すぐに行われた、明治と大東のBチーム同士のゲームでも、39-22と勝ちを収めている。しかし日本一を目指すチームは、その強化の途上にあることは言うまでもない。試合後、主将の杉本選手は話してくれた。「確かに、最後にトライも決めて大東大に勝ちましたが、それより良かったのは『1対1』というテーマを掲げて、それを意識したプレーを選手全員ができたこと。今は毎試合、テーマを変えて戦っています。今日の試合はテーマを徹底できたと思います」。
 勝利という結果はもちろん、内容を強く意識した試合を繰り返すことで、チームの強化はより明確になっていく。目標を設定し、課題を見つける。こうして試合内容の濃度を高めていくことで、着実にチームは強くなっていくのだろう。吉田監督の目にも多くのポイントが映ったようだ。「今日のゲームは、1対1を意識した良いプレーも多くありましたが、練習でやっていることがうまく出せていないところも目立ちましたね。たとえば、ガットプレーというボールをわたすプレーでは、ボールの扱いが丁寧にできていなかった。もっと身体と身体を寄せてボールをわたさなくてはいけないところです。ラインアウトからの空中戦にも課題を残しています」と語った。
 試合を重ねるたびに、着実に強くなっていく。そんな頼もしさを感じさせる明治は、今後も各地でゲームを行う。23日には山梨で法政、30日には静岡で早稲田と実力校との試合が控えている。




(取材・文/田口悟史 撮影/福田喜一)