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特集2010:「新チーム、初戦を飾る」
2010/04/27





全国的な好天に恵まれた、4月の最終日曜日。明治大学ラグビー部は、Aチームを主体としたメンバーが長崎の地を踏んでいた。「第34回長崎招待ラグビー」への出場のためだ。相手はトップリーグや大学で活躍する選手と、地元・三菱重工長崎の選手で編成された長崎ドリームチーム。今シーズンのチームにとって、大切な初戦となる試合だ。初夏を思わせるような強い日差しの下で、紫紺のジャージが躍動した。


「長崎招待ラグビー」は、九州でも指折りの招待試合。明治の試合が行われる前にも、長崎と福岡の中学生選抜による試合や、東福岡高校と長崎県選抜との試合に加えて、タグラグビーやラグビー教室なども開催されていた。対戦相手の長崎ドリームチームは、その名の通り長崎に拠点を置く社会人チームの三菱重工長崎のメンバーに、トップリーグや大学で活躍する長崎出身の選手を加えた豪華な編成。混成とはいえ、素早い展開と鋭いランニングが特徴だという。
明治はこの日に向けて、長崎市内で4日間の事前合宿を敢行。その充実ぶりを示すかのように、試合会場に現れた選手たちは、一様に日焼けをした精悍な顔つきとなっていた。合宿による疲労の蓄積があるかとも思われたが、ウォーミングアップが進むにつれて、鋭く烈しい動きをみせる。昨シーズンから取り組んできた体幹の強化が、実を結び始めてているのだろう。アップが進むにつれて、コールも大きくなっていく。ロッカールームで紫紺のジャージを着る頃には、程よく熱を帯びた状態になっていた。
準備を整え、静かながらも気合いが充満した選手たちに対し、細谷ヘッドコーチから声が飛んだ。「全員、一対一、一対一だよ。絶対引くな!」。そして吉田監督が語りかけた。「今シーズンのファーストゲーム。紫紺のプライドだよ。前に出るぞ。最後まで、全力で戦おう!」。選手たちが大きな声で返す。ゲームキャプテンを務める13衛藤は円陣の中でスコッドメンバーに伝えた。「俺も体を張って戦う。だから、最後まで体張って戦おうぜ。勝とうぜ!」。新チームのファーストゲームが始まった。
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前半は長崎ドリームチームのキックオフでスタート。明治はすぐさまスコアを動かした。相手のキックを15小泉がキャッチし、鋭いランニングを仕掛けたのがきっかけだ。相手の22メートルライン付近まで一気にゲインすると、それが長崎ドリームチームのペナルティを誘う。ゴールライン付近でのマイボールのラインアウトを選択した明治は、そのままドライビングモールを押し込み、待望の先制トライとなった。10田村がゴールも決めて、開始4分に7-0とする。しかしすぐさま長崎ドリームチームも反撃。個人技から明治の左サイドを破り、逆サイドへ展開。最後はフォローに回ったFWがトライを決めた。ゴールはならなかったものの7-5とする。
ブレイクダウンの烈しいプレーから、主導権を掴みにかかる相手に対し、明治はBKのランニングと前に出るディフェンスで渡り合う。一進一退の攻防が続く中、スコアが動いたのは15分のこと。フィールド中央付近で明治がターンオーバーされ、そのままラインブレイク。最後はサイドへ展開されてトライ。7-10とリードを許す。しかし2分後には、先制点と同じく、明治がラインアウトからドライビングモールでトライを奪い返し12-10。明治らしい正確なセットプレーが、この日も威力を発揮した。
強い日差しにより設けられたウォーターブレイク開けの26分、長崎ドリームスの9田原(NTT)が個人技からラインを破りトライ。ゴールも決まって、12-17と再度逆転される。しかし、明治は前半たびたびチャンスを作ったバックス陣が右サイドを突破。28分に14斉藤、13衛藤とつなぎ、最後は15小泉が相手を引きずりながらトライ。10田村もゴールを成功させて19-17とする。しかし、このリードを守りきることができない。長崎ドリームチームの9田原に再びラインブレイクされ19-22。前半はこのままのスコアで終了した。


前半を終えた選手たちのロッカールーム。FWでは相手のハーフをこれ以上自由にさせないための方策が練られ、BKでは10田村が中心となって「強気で行こうよ。BKは走れているんだから、もっとガンガン攻めていこう」と話し合っていた。息を整える選手たちに、細谷ヘッドコーチは修正ポイントを指示。「ラインで我慢してディフェンスしよう。もっとチャレンジしよう」。そして吉田監督が選手たちを鼓舞するように話した。「前半、悪くないぞ。継続プレーが良くできている。ブレイクダウンはもっと烈しく。いいか、後半は壁を作るんだ。前に出る紫紺の壁を。相手をノートライにするぞ」。
後半は明治のキックオフでスタート。メンバーは3城と17小野の入替が行われていた。落ち着いた立ち上がりをみせる両チーム。体を張ったディフェンスが目立つ締まった展開となる。そんな中、後半6分に明治は鮮やかにトライを奪う。ハーフウェアライン付近のラックから、10田村が好配球。長崎ドリームチームのディフェンスの虚をつき、8千布がラインブレイクからそのままトライ。ゴールはならなかったものの、24-22と再び逆転した。前半は得点後に失点する展開が続いたが、後半は明治が主導権を握り続ける。11分には明治ボールのスクラムから、8千布、9秦とつなぎ、最後は14斉藤がトライ。10田村のゴールも決まり、31-22とリードを広げる。その後も相手陣内でのプレーが続く明治。ブレイクダウンの烈しさや体を張ったディフェンスによって、長崎ドリームチームに自由なプレーを許さない。20分には2渡部と16郷が交替。21分には9秦と20筆谷、13衛藤と22外原の入替も行われた。
スコアが再び動いたのは21分のこと。後半に入って陰を潜めていた、長崎ドリームチームの素早いリズムの展開が再び息を吹き返し、最後は明治の左サイドを破ってトライ。ゴールも決まり、31-29と点差を詰められる。ここでさらに明治はメンバーチェンジ。10田村、6竹内、4梁に替わって、21染山、18古屋、19前田が入る。フレッシュな選手たちが加わり、再び長崎ドリームチームへと襲いかかる。替わって入った21染山から14斉藤と繫ぎ、右サイドを突破。そのままインゴールへと駆け込み、このゲーム2本目のトライを挙げた。21染山もゴールを決めて38-29とする。追う長崎ドリームチームも、PGから加点し38-32と1トライ差につめよる。
ゲームも終盤に差し掛かり、明治はBKのランニングと相手のペナルティを足がかりに再び攻め込んでいく。そして34分、待望の追加点をスクラムトライで挙げた。この試合の行方を決定づける得点だ。21染山もゴールを成功させ、45-32とする。試合終了間際にも、明治はラインアウトからドライビングモールでトライ。21染山がゴールを決めたところでノーサイドの笛。52-32と大きなリードを奪っての勝利だった。


試合後、フィールドの一角でクールダウンを始めた選手たち。50点以上を奪っての勝利だけに、その表情は明るい。しかし、口をついて出るのは、この試合の修正点だった。吉田監督が話してくれた。「昨シーズンから、選手たちにはラグビーに対する姿勢を問うてきました。生活のスタイルや精神面でラグビーにどう向き合うか。今回の合宿でも、選手たちは日常的にラグビーの話をするようになった。大きな変化です」。こういった選手たちのラグビーに対する姿勢も「明治の矜持を取り戻す」ために欠かせないことなのだろう。
ストレッチを終えた選手たちを集めた吉田監督は語りかけた。「今日の試合、素晴らしかった。試合前にテーマとして掲げた、1つ1つ集中して、最後までやりきる、ということが、君たちはできていた。後半に逆転できたのはその証だ」そしてさらにこう加えた。「今日のゲームは君たち一人一人の力を出しきった結果だ。これからもさらに集中した練習を積み上げ、もっともっと強くなろう」。細谷ヘッドコーチからは、修正のポイントが挙げられた。「まだ粗いところも結構あるぞ。それでも勝てたのは基本的なことをやりつづけられたから。そしてプライドを持ってプレーしたからだ。今日のゲームは良かったけれど安心はするな。今年はもっともっとやるぞ」。最後に衛藤副将が話した。「今日は良かったけど、課題は出てきた。もっと練習してもっと強くなろうぜ」。このゲームでさらに日に焼けた選手たちの顔が引き締まっていた。
昨シーズンから取り組んできた、体幹の強化や精神面での充実が実を結び始めている——吉田監督の話を聞き選手たちのプレーを見ると、そんな印象が確かなものになる。長崎での合宿はこの日で終了。この地で得た自信や見つけた課題は少なくないはずだ。それらをまとめて背負い、チームは八幡山へ。初戦を勝利で飾った喜びを、胸の中にしっかりと納めて。





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