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特集2010:「全明治vs.全慶應」

2010/04/13

日本一を目指す「明治大学ラグビー部、前へ」VOL.33
「全明治vs.全慶應」

全早慶明ラグビー交流戦は、第2節を迎えいよいよ全明治が全慶應と対戦。4月3日の第1節で全早稲田に26-19と勝利した全慶應との真っ向勝負。OBの社会人選手と学生選手が入り混ざるチームは、普段の試合とはまたひと味違った緊張感が漂っていた。伝統校のプライドがぶつかり合う一戦が観客を魅了した。



第30回 全早慶明三大学対抗ラグビー戦
全明治 vs. 全慶應
● 7-38 ○

2010.04.11 青山・秩父宮ラグビー場


「プライドをかけた戦いへ」

 思いのほか暖かくなった秩父宮ラグビー場は、明治付属高校選抜と慶應付属高校選抜の試合を終えて、全明治と全慶應の選手たちがフィールドに迎え入れられた。記念撮影などのセレモニーを終えて、午後2時のキックオフを迎えようとしていた。全明治は、2003年度卒の4小堀正博(横河武蔵野)をキャプテンに8人のOBと7人の現役によるチーム編成だ。今シーズン、強いフォワードを全面に押し出していきたい明治にとって、ここでOB選手から受け取る「何か」が起爆剤になるはずだ。後輩に何かを伝えたい、継承していきたいという思いは両校ともにかわることがない。明治は明治のカラーを慶應は慶應のカラーを出し切るために、駆け引きなしに正面からぶつかり合う戦いが始まろうとしていた。

 試合前のロッカールームでは、就任1週間が経った細谷ヘッドコーチが全員に声をかけて握手して回っている。試合前の練習でも、わずかな時間を見つけては小さな円陣でまとまり、コミュニケーションが密に取られている印象が強かった。細谷ヘッドコーチが時間を推し量ったように声をかける。この1週間、グラウンドで声を出しっぱなしだったという細谷ヘッドコーチの声は、やや枯れていた。
「しょっぱなから行きましょう。やることは少ないです。接点を大事に。コンタクトエリアに低く速く。走り抜いて1本取ろうぜ。前半から行くよ」。
 選手たちのボルテージが一気に上がってきたところで吉田監督の檄が飛ぶ。
「このメンバーでやれるのは最初で最後。今日の試合は自分たちのためだけではなく全明治のOBの方たちのためにも魂を込めて戦わなくてはならない。紫紺を着たら絶対に勝たなくてはならない。よし行こう」。
 低く唸るような音から気合いが廊下に響き渡り、選手たちがフィールドへ吸い込まれて行った。




「一期一会のチームが結束する」

 午後2時、明治ボールのキックオフでゲームが始まった。2分が過ぎたところでBKが自陣でのボール処理にもたついてしまう。そこに走り込んできた全慶應11中浜にボールを取られ先制トライを奪われる。ゴールも決まり0-7に。その後、慶應の低く速いタックルとその動きにやや押される印象の攻防が続く。16分過ぎ、全明治のハイタックルのペナルティーからコンバーションを狙った全慶應だったが、ボールがポストに当たりフィールドへ。ボールをキープした全明治が攻撃に転じたラックの中でFWの3土井貴弘(NEC)がスタンピングの反則。シンビンの適応を受け10分間の退場となってしまう。20分過ぎ、ゲームの流れとしては大きな出来事だった。直後に全慶應5村田がトライを決め、ゴールも成功し0-14、6三村に替わり17城が入りFWの圧力を増すが、流れを掴んだ全慶應を止めることはできず、28分に全慶應22金本に走り込まれてトライで0-19。30分過ぎにシンビンから3土井がフィールドに戻った。攻防が続くなか、全明治はようやくFWがゴツゴツと前へ出て行く。時間はロスタイムに入っていた。全明治は低く立ち塞がる全慶應のディフェンスを押し切るかたちでスクラムからモールで押して、最後は8杉本(博昭)がトライを決めた。ゴールも決まり7-19として前半を終えた。



「後半にもっと明治らしさを出したい」

 この日のゲームをエキシビションと捉えている選手は一人もいない。ハーフタイムのベンチでは、盛んに後半に向けた意見が交わされた。「ラグビーを楽しむだけじゃなく、ここから逆転してゲームも楽しもう」。FWユニットではそんな声が聞こえていた。当然のことながら長い時間一緒に練習を積んできたチームではないが、伝統が育んだアイデンティティーがチームをひとつにまとめていった。
「ユニットで最終確認しよう」。細谷ヘッドの声が静かに響く。
「集合しよう」。次の声で円陣が組まれチームが再びまとまった。「後半の入りが大事。10分間が大事だ。BKは1メートルでも前にボールを運ぼう。FW、接点で勝とう。モールで勝負しよう」と細谷ヘッド。「明治はFWから前に出て切り裂いていこう。慶応のバックスラインは揺さぶってくるはず、もっと早く陣形を取ろう。よし行こう」と吉田監督が念を押した。
 全慶應のキックオフで後半が始まった。開始から10分の攻防は、攻め上がる全慶應の速い展開を全明治のディフェンスがプレッシャーをかける状況が目立った。確実に押さえ込み、攻めに転じるがそこには全慶應の低いタックルが突き刺さってくる。11分過ぎ、両チームとも選手の入れ替えが行われた。全明治は、5安藤隆紘(NTTコミュニケーションズ)に替わり19名嘉、10田村に替わり21染山が入った。全慶應も2名が入れ替わった。選手交替後に、流れを掴んだのは全慶應だった。15分に全明治のペナルティーから一気に右に展開した全慶應14栗原が右隅にトライ、ゴールを決め7-26。全明治は16分過ぎに、15陣川真也(神戸製鋼)に替えて22石井を投入。22分過ぎには全慶應22金本にキックパスで走り込まれトライ、ゴールを奪われ7-33。全明治はさらに2杉本剛章(三菱重工相模原)、3土井に替えて16渡部、17城を入れて制圧を試みるが、37分に全慶應15小川にキックチェイスからトライを決められて7-38でノーサイドを迎えた。




「お互いを研鑽する良きライバル」

 試合後の記者会見で吉田監督は、全慶應をリスペクトし「明治としては、今シーズンも優勝を目指しやってきています。全明治はトップリーグをはじめ社会人のラグビープレーヤーとして活躍しているOBの皆さんと一緒に勝ちに臨んだ試合です。ゲーム内容としては、慶應さんの低く速いタックルに得点が取れませんでした。BKのミスもありました。FWを起点としてゲームを進めようと意思統一をし臨みました。今シーズンスタートから現役選手たちは接点の強化を中心に取り組んできました。個々の接点の強さには成果がみれたと思います。次週の全早明戦では明治のレジェンドの一人である元木選手が出場します。チームはOB中心に組んでいくことになると思います。最後のゲームを勝利し、花道で送ってあげたい」と話した。
 小堀キャプテンも「1本スクラムトライを取ることができて良かった。これからもラグビーをやって行く手本となれるように頑張っていきたい。前へ出る明治らしいラグビーができて良かった」と語った。「チームカラーである低いタックルと新しいカラーであるボールをどんどん動かしてく自分たちのスタイルを出していくことができた」と話した全慶應の林監督も、吉田監督同様、伝統校が切磋琢磨していく意義を示した。
 アフターマッチファンクションでは、多くのファンの皆さんを前に、吉田監督が慶應の皆さん、関係者の皆さんに謝辞を述べた後、MVPを発表した。「プレーのみならず、ラグビーに臨む真摯な気持ち、後輩たちに伝統を継承しようとする気持ちを感じました。慶應レジェンドの一人でもある栗原キャプテン」と名前が告げられた。会場は両校の部歌ならびにエールの交換が行われ、ファンの皆さんを交え楽しい時間が過ぎていった。
 会の終了間際に話ができた杉本主将は「ミスが目立った試合だったが、接点のプレーはやってきたことを出すことができた」と確かな手応えを感じていた。また後半出場し負傷を負った名嘉に対して「怪我が心配ですが、また翔伍と話してみます」と気遣っていた。早い回復と復帰が望まれるところだ。
 今週末は、全早明の一戦が待ち構えている。こちらも目が離せない一戦になりそうだ。




(取材・文/遠藤一樹 撮影/福田喜一)