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特集:VOL.28「早稲田との接戦に惜敗する」

2009/12/07

日本一を目指す「明治大学ラグビー部、前へ」VOL.28
「早稲田との接戦に惜敗する」

最高の天候で迎えた早稲田との一戦は、対抗戦最終戦を飾るにふさわしいゲームとなった。2年ぶりの対抗戦優勝をかけた早稲田に対する明治も対抗戦の勝ち越しがかかる試合だった。選手たちからは、その状況よりも早稲田との一戦に自分たちの持っているすべての力を出しきるんだという思いが伝わってきた。僅かに勝利に届かなかったゲームだったが、今シーズン明治がやりたかったラグビーを観ることができた。

関東大学対抗戦
明治大学 vs. 早稲田大学
●14-16○

2009.12.06
「強い相手にも、踏み込んで低く」

 試合前のロッカールームでは、吉田監督が話を始めた。
「早稲田と戦うために選ばれた22人、先発する15人、ここでやらなくてどこでやるんだ。どんな相手でもとことん戦う。早稲田は今日、半端じゃないモチベーションで来る。我々、明治はプライドを持って戦う。勝ちたいか、負けたいか、簡単な話、気持ちだ」。熱く語る吉田監督も、この一戦にかける思いは強かったはずだ。このゲームの選手を選考してから、さらにプレーの研鑽をしてこの日に臨んでいた。試合前の話はさらに具体的に、接点、1対1、サポート、フォワード力、停滞プレーとこだわって積み上げてきたことへの確認とアドバイスに及んだ。
「どれだけ大きい相手でも、どれだけ強い相手でも踏み込んで低く、離さない。体ごと持っていく」。自ら、黒須コーチに体を当ててその気持ちを選手たちに伝えていた。緊張感を高めながら、選手たちがアップに向かう。いつものアップよりも一段と声が出ている。「倒せ、倒しにこいよ」とダミーを持ってタックルを受ける4年生、黒岩の声が響きわたる。黒岩らが、後ろでコーチたちがサポートしなければならないような、もの凄いタックルを受け止めていた。緊張感のあるいい雰囲気で試合の時間を迎えた。

「強い気持ちで当たっていく」

 1本目から低く力強いタックルが決まる。立ち上がりから、早稲田を前に出させないプレッシャーの強いディフェンスが目を引いた。5分過ぎ、早稲田がラックの中でハンドの反則を取られる。明治はこのチャンスをラインアウトにつないだ。6分過ぎ、ラインアウトからモールを作り押し込んで行く。最後は8杉本がトライを決めて、先取点を挙げた。10田村が、ゴールも確実に決めて7-0とした。その後、キックの応酬で地域を行ったり来たりしながらの攻防が続くが、明治の当たりの強さが、目立つ試合展開だった。28分過ぎには、早稲田のノットリリースザボールの反則から得た攻撃のチャンスを、右にパスで展開し2つ目のトライを奪った。トライを奪ったこのラインは、バックスではなく2伊吹、7西原、8杉本とつなぐフォワードで作られたものだった。吉田監督が言う「ボールを持てば、15人がどこからでも攻められるラグビー」のひとつかたちだ。そしてこのゲームではその前提となる強いフォワードが、ボールを持つチャンスを作り出していた。フィールドでは、10田村が難しい角度からゴールを決めて14-0と早稲田をリードした。競技場が沸きに沸いている。40分過ぎ、早稲田はフリーキックを得て、ペナルティゴールを狙いこれを決めた。試合巧者の一面を見せた場面だった。14-3として前半を終えた。

「じわりじわりと追いつかれる」

 ハーフタイム、ロッカールームは活気に満ちていた。リードして折り返した前半に浮かれているのではなく、引き締まった活気に満ちていた。土橋コーチからは「どんどんプレッシャーをかけていこう」と檄が飛んだ。吉田監督は「わかってるな、勝つよ!絶対に受けない。1対1だ、1対1だよ」と強い接点のプレーを促した。
 後半が始まっても明治は強い気持ちでプレーに臨んだが、じわりじわりと早稲田が押し始めた。4分過ぎ、フリーキックのチャンスを得た早稲田は、ペナルティゴールを決めて14-6と追い上げる。6分過ぎには、早稲田の攻撃を阻もうと果敢にタックルに行った13衛藤が負傷し、22居迫と替わった。早稲田も選手を入れ替えながら追撃の手を緩めない。19分過ぎ、早稲田はついにトライを奪い、14-11と肉薄する。26分には、2伊吹に替わり、16鈴木が入る。28分過ぎ、早稲田のラインアウトから、攻め込まれて最後は早稲田20櫻井にトライされて、14-16と逆転された。この後、22居迫に替わり、21染山が入る。確実に早稲田に押される展開となっていたが、明治も最後まで強い闘争心で立ち向かう。ロスタイムは4分、1プレーで逆転ができる。42分、6堀江に替わり、19竹内が入る。ベンチではリザーブの17榎が出番を待ちきれない様子で試合を見つめている。44分過ぎ、攻めていた明治のスローフォワードの反則でゲームが切れてノーサイドとなった。惜しくも破れたゲームであったが、僅かな期間で見事に修正されたラインアウトが印象に残った。明治のプライドを感じる一戦だった。

「破れはしたがナイスゲーム」

2点差、わずかに及ばずゲームを勝ち取ることはできなかったが、誰もが「いい試合であった」と感じる一戦だった。明治は、今シーズン目指してきた最も明治らしい戦いで対抗戦を終えた。持っている力を出しきったゲームだった。
 試合後の記者会見で吉田監督は「この一戦では、一人一人が明治の魂、自分の中に宿るラグビースピリッツを出して2つのトライを取ることができました。今年こだわってきた15人が攻めるラグビーです。後半は早稲田の素早いアタックに受けにまわって2つトライされたというのが戦況でした。56点を取られた帝京戦の結果を真摯に受け止めてやってきた結果です。破れはしましたが、選手たちは胸を張って大学選手権に臨めると強く思っています」と話した。
 西原主将も「力の差で負けたが、まとまって戦えば、ここまでやれる。大学選手権まで2週間あるので、頑張っていきたい」とこの日の試合と大学選手権への意気込みを語った。記者からのいくつかの質問に答えて会見を終えた。
 土橋コーチは、この日のゲームを振り返り「後半の残り12分のプレーがとても大事なところでした。最も厳しく激しく攻防する時間帯です。ここで強い力を出せないと勝てない。大学選手権に向けては、間違いなくプラスになる試合でした。こういうビッグゲームのあとは、気持ちを引き締めていかなくてはならないのも事実。やれる!という状態で次の試合に臨みたい」と話してくれた。
 大学選手権の抽選会は、今日の夜、行われることになっている。どこと当たることになっても、この日のような明治らしいラグビーを観ることができるだろう。

(取材・文/遠藤一樹 撮影/福田喜一)